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@私の易の学び方
易と経営
経営は自然の摂理を知る事と人の心を知る事です。
素直な心は人間の本質を生かす大切なキーになります。
椿社境内に経営の神様「松下幸之助」の神社があります。
「自然の摂理と人間の心を知る事」
昔、人間学の書籍を出版する致知出版社の藤尾社長が松下幸之助創業者にインタビューされ、経営の神髄を一言でお願いしますと聴かれると、二言でよいですかと前置きをされ、次のように答えられました。「経営の神髄は自然の摂理を知ることと、人間の心を知ることです」と話されました。経済は経世済民の略ですがが、松下幸之助創業者は電器事業で経世済民をされた人です。そして、商学院や枚方中央研修所、及び松下政経塾を設立し人材育成にも力を入れた方です。
松下電器(Panasonic)の理念はPHPです。そして「理念とビジョンと人づくり」です。 ※Peace and Happiness through Prosperity(繁栄によって平和と幸福を)
「経営の神様」の松下幸之助さんは本当に神様になっておられました。
©Akamatsu Noboru
三重県鈴鹿にある猿田彦神社の総本山、椿大神社の境内に松下幸之助社があります。
猿田彦神社は天照大御神を伊勢の地に導いたパイロット役の神様です。伊勢には猿田彦神社があります。椿大神社は主神猿田彦大神が祀られています。御神徳は方災解除、厄祓、土地家屋敷国土の御守護です。新規事業の神様でもあります。松下幸之助創業者はこの神社で事業の発展、従業員とその家族、社会への貢献などを神に祈られていたのだと思います。
©Akamatsu Noboru
1.松下幸之助創業者の人づくりの考え方(図にしてみました)
職場に四階建てのビルを建てろ!
「仕事を通じて人格形成を行い、一人一人が経営参画を行う。」
松下電器産業㈱は歴史の中にこの精神を貫き通してきました。
©Akamatsu Noboru
朝の社員教育
朝会に社歌を斉唱したのちに下記の松下電器の綱領・信条・七精神を唱和します。その後、当番で所感を発表します。
松下電器の綱領・信条・七精神
綱領
産業人たるの本文に徹し
社会生活の改善と向上を図り
世界文化の進展に寄与せんことを期す
信条
向上発展は各員の和親協力を得るに非ざれば得難し
各員至誠を旨とし一致団結社務に服すること
七精神
一、産業報国の精神
産業報国は当社綱領に示す処にして 我ら産業人
たるものは本精神を第一義とせざるべからず
一、公明正大の精神
公明正大は人間処世の大本にして 如何に学識才
能を有するもこの精神なきものは以て範とするに
足らず
一、和親一致の精神
和親一致は既に当社信条に掲ぐる処 個々に如何
なる優秀の人材を聚むるも この精神に欠くるあ
らば所謂烏合の集にして何等の力なし
一、力闘向上の精神
我等使命の達成には徹底的力闘こそ唯一の要諦に
して 真の平和も向上も此の精神なくては嬴(か)ち
得られざるべし
一、礼節謙譲の精神
人にして礼節を紊(みだ)り謙譲の心なくんば社会
の秩序は整わざるべし 正しき礼儀と謙譲の徳の存
する処 社会を情操的に美化せしめ 以て潤いある
人生を現出し得るものなり
一、順応同化の精神
進歩発展は自然の摂理に順応同化するにあらざれ
ば得難し 社会の大勢に即せず人為に偏する如きに
ては決して成功は望み得ざるべし
一、感謝報恩の精神
感謝報恩の念は吾人に無限の悦びと活力を与うる
ものにして此の念深き処如何なる艱難をも克服する
を得 真の幸福を招来する根源となるものなり
©Akamatsu Noboru
『易経』や陽明学を学べば学ぶほどに、歳をとるほどに松下幸之助さんは凄い人だなと思うようになりました。素直な心が持てるようになれば、
「人生に素直な心に気づいた価値は百万両」でしょうか。
松下幸之助さんの「素直な心は、あなたを強くします」の言葉が甦ります。
素直な心を養う10ヶ条
1.つよく願う 素直な心になりたいと強い気持ちを持ち続けることである
2.自己観照 自己観照を心がけ、自分自身を客観的に観察し正す所は正す
3.日々の反省 自分の行いを反省し、改める所は改めること
4.つねに唱え合う 素直な心を養うには、口に出して素直な心になるよう唱え合うこと
5.自然と親しむ 心して自然に親しみ、大自然の素直な働きに学ぶこと
6.先人に学ぶ 先人の尊い教えにふれ、それに学び、帰依していくこと
7.常識化する 素直な心を養うこと自体を、お互いの常識にすること
8.忘れないための工夫 素直な心になることを忘れない工夫が必要
9.体験発表 素直な心の実体験を発表しあい、研究すること
10.グループとして 素直な心を養う仲間同士協力しあうこと
2.「経営の神様」といわれた松下幸之助創業者とは
第一に、強い使命感と強い信念を持ち、人の心を大事にし、人づくりには人一倍情熱
を傾けたカリスマ的リーダーであり、人間味溢れる経営者でした。
第二に、経営理念と共にフレキシブルな変革を実行に移す経営者で、産業人として世界文化の発展に寄与することを綱領に定め、『社会の公器』として社会に貢献する企業を標榜し続けました。PHP思想(平和と幸福と繁栄)で生き生きした職場づくりを目指した経営者でもありました。
第三に、常に「私心」を捨てる努力を怠らず、「素直さ」を重視する経営者でした。リーダーになる素養は「素直な心」を持っていることが前提条件であると言い切っています。また松下幸之助氏本人も、相手の話に素直な気持ちで耳を傾ける人でした。
第四に、「自然の理法」に従い、不屈の精神力で多くの試練を乗り越えてきた経営者でした。「企業は経営理念が大事」、「自主責任経営」、「社員家業」、「適正利潤の確保」、「赤字は罪悪」、「利益なき事業は無い」、「無借金経営」、「ダム経営」、そして「適正経営」など経営を体得して得た多くの名言を残されました。
第五に、常にビジョンを持ち、「何が正しいか」を自問自答する経営者でした。
第六に、社員の教育に熱心でした。「松下電器は商品をつくる前に人をつくる」や「人をつくれば仕事はあとからついてくる」と言わしめた人でした。松下電器は流通研修所や中央研修所、及び技術研修所を開設し、また、ショップ店の後継者育成としての松下商学院(現在は松下幸之助商学院)を開設して教育を積極的に行いました。特に松下商学院ではマネジメントの科目に「東洋の古典(大學、論語、孟子)」があり政治哲学や対人関係を律する哲学、及び仁義の道徳を教えているのがユニークです。そして社外では松下政経塾をつくり国政に参加できる人づくりも行ってきました。
松下幸之助 私利私欲が会社を潰す
YouTube 松下幸之助経営塾 PHP研究所
3.松下幸之助創業者の哲学とは(図にしてみました)
「人間は宇宙の摂理で生かされ、その真理から限りない繁栄と平和と幸福を私たちに与えてくれています。そして、生成発展は自然の理法・変化の理法で、それは宇宙の根源です。人間はこの宇宙の根源の秩序に従う事が大義であり、宇宙の法則を求めていくところに調和の本質があります。全てが生かされている真の調和の社会をつくりあげなければなりません。また、自然の恵みに感謝して宇宙の心に応ずる心構えを確立する事も必要となります。つまり相応ずる生活態度を打ち立てるところに、繁栄、平和、幸福の基があります。その為には、素直な心で、真理に順応し心豊かな社会をつくらなければなりません。」と述べられています。
※[松下幸之助創業者は『松下幸之助の哲学』のⅠ 自然・宇宙の章から要約
『易経』の哲理と松下幸之助創業者の哲学を比較すると、酷似しており、自然に通ずる素直な心を喚起させ、心豊かな社会づくりを目指して事業経営をされたことが理解できます。この様に自然摂理に則り素直な心がこの社会を良くすることが分かります。『易経』の理解と王陽明の致良知の実践がこの世を良くする切り札となります。
素直な心
物事の実相を知り、人間の本質を生かす一番大切なキー。偏らず、一筋に真中を貫く心。
自然の恵み
自然の恵みに感謝する所に、繁栄、平和、幸福の礎がある。宇宙の心に応ずる心の確立
繁栄の基
素直な心で真理に順応し心身豊かな社会づくり
松下幸之助
の
哲学
調和の本質
宇宙の法則を求めていくところに調和の本質がある。
生成の発展
生成発展が自然の理法。変化の中に不変がある。それは真理であり、宇宙根源の力である
大義の意味
人間の繁栄は宇宙の秩序に基いている。宇宙の秩序に従うこと。
©Akamatsu Noboru
易の三義と六義
易は森羅万象を捉えたもので「変易」「不易」「簡易」の三原則の三義と「神秘的」「天地万物の創造」「治める」を入れて六義があります。
三義
①変易(変わる・変える)
②不易(不変・永遠)
③簡易(シンプルである)
六義(三義+以下)
④神秘(神秘的である)
⑤天地万物の創造(creation)
⑥治める(人間の道を治める)
参考文献
・『易学に基く人間観』松下政経塾 塾生レポート 谷中修吾(卒業生)著 2005.04
・『松下幸之助の哲学』松下幸之助 著 PHP研究所 2009.4/2021.10
・『易学入門』安岡正篤 著 明徳出版社 1960.11/1992.10
・『易と人生哲学』安岡正篤 著 致知出版社 1988.9/1994.8
4.松下幸之助氏の〈意思決定〉を支える「意識構造」
自 在
・自然体
・常識にとらわれない
・直観力が鋭い
・平衡感覚
素直な心
・私心を持たない
・衆知を集める
・実相が分かる
楽 天
・生成発展
・人間は万物の王者
・心底から心配する
必要はない
・運を信じる
松下幸之助
変わり身の
早さ
素直な心
自在
ビジョン
ソロバン
自 主
楽 天
ビジョン
・使命感を持つ
・何が正しいか
・常に自問自答する
・こうありたいと
考える=先見力
自 主
・誰も助けてくれない
・ダム経営
・ムダや無理はできない
ソロバン
・会社は天下の公器
・成果をあげられないの
は悪である
・売上利益率10%
=適正利益
©Akamatsu Noboru
『松下幸之助の研究-理想を掲げる現実主義』プレジデント9月号 プレジデント社 1979
特集 「理想を掲げる現実主義者」二宮欣也 著 より出典
5.人間を深く知る経営者が従業員も会社も幸福に導く
松下幸之助創業者は
・人の心を良く理解した良識人でした。
・優良な企業は人づくりからという認識を持っていました。
・企業は社会の公器であるという認識と、使命と経営哲学を明確に持っていました。
・利益が社会貢献であるという意味を深く認識していました。
・私心を持たないリーダーでした。
・洞察力が鋭いリーダーでした。
経営の神髄は「経営は人の心を知ることと、自然の摂理を知ることである」と言われて
いる言葉に、経営哲学がこの言葉に包含されています。また、社会貢献を認識しながら
企業活動を実践してきました。孔子の言葉に「天爵而して、人爵これに従う」がありま
すが、言動や特性、及び褒章や公職を見ているとこの言葉を思い出さずにはいられませ
ん。以上のことにより、人間を深く知る経営者が従業員も会社も幸福に導く大きな要因
になっていることは事実です。
6.エクセレントカンパニーは人づくりから
◆成功している企業が究極めざすものは
成功している企業が究極目指すものは何でしょうか。一般的に企業の創業当時は高い志
や理念を持った企業は少ないかもしれません。しかし、好不況の中でもまれ、生き抜い
て行く内に良識をもった企業は、多くのことを体得していきます。そして、その中から
正しい理念とビジョンの必要性や人づくりの重要性を学ぶはずです。企業が生成発展し
ていく為には、企業を構成している「人」を育てなければなりません。つまり、人の成
長は、企業の成長であるということを忘れてはいけません。従業員も経営者も理想とす
る産業人として、切磋琢磨しながら学んでいかなければ成長はありえないと思います。
エクセレントカンパニーにはエクセレントな人材が集う。それが、会社のコンピタンス
となり、社会と共に歩む理想の企業となっていくのではないでしょうか。
7.人づくりを目指して
人員整理を行なう企業は、真の意味で人材育成を行ってこなかったのではないでしょう
か。変革を乗り越えた組織は、学校や塾をつくり、すぐれた組織文化や理念、そして実
学を教えています。
歴史的にもいくつかの事例があります。J・F・ケネディが尊敬した、江戸時代中期の
米沢藩藩主・上杉鷹山(1751~1822)もその一人です。彼は財政改革を行なっ
たあと、人づくりが重要と藩校「興譲館」を設立して人材育成を行なっています。ま
た、私の郷里にも江戸中期、姫路藩大老・河合寸翁(1767~1841)と言う賢人
が存在し、酒井藩主を支え、73万両の借財を返済する財政改革を行ないました。ま
た、彼も財政改革後、藩主の許しを得て「仁寿山校」を設立し、実学を中心に日本国家
を支える人材育成を行ないました。このように昔から、組織の心の興廃により、経済が
弱体化し、それをあるべき姿に建て直し、その結果、人づくりが一番重要として人材育
成としての学校を設立してきました。これが日本国家を強化する礎となったのではない
かと私は考えています。翻って現代を見ると、松下幸之助氏も人づくりが一番重要と考
え人材育成に力を注いできました。後に松下幸之助氏は「松下政経塾」を設立し、国政
に参画できる人材づくりを行いました。
8.自律的キャリア開発と、人間を深く知る経営者が幸福と繁栄をもたらす。
人も企業も幸福になるには、双方の価値観が原点であり、その価値観を共有し合うとこ
ろから幸福は始まると考えます。しかし、その中に双方の利益と社会への貢献を果たし
ていかなければならない責務が包含していることも事実です。これらを解決していくに
は、自律的なキャリア開発とそれを良く理解し、支援する経営者の存在が不可欠である
と考えます。つまり、人間を深く知り、企業の使命や産業人としての使命を自覚し、実
践力を持つ経営者が幸福と繁栄をもたらすと私は確信しています。又そういった人づく
りや経営者の育成も重要であり、そこから本来の従業員と会社の幸福のスタートがある
と結論付けをします。最後に、岡田武彦先生が中国古代の思想家から会得され、私達に
教授してくださっている『処世に重要な三つの人生観』を私なりに理解し、要約して結
論を締めくくりたいと思います。それは、人間とは『現実主義』(功利的思想)的な存
在であるが、『超越主義』(自然の摂理と一体感の思想)を良く理解し、『理想主義』
(道徳思想)に向かって歩む姿が、人間にとって大事なことではないでしょうか。松下
幸之助創業者の歩んでこられた足跡や経営哲学からもそのように思われます。
神に祈りを捧げて
松下幸之助創業者はよく祈っておられました。創業者は神道尊崇の念が強く、伊勢神宮崇敬会会長と全国神社会総代を兼ねておられました。京都東山に真々庵を建設された時に建物内に伊勢神宮に模した神社を造られました。その名は『根源社』です。また、事業場には必ず神社を造られていました。また、創業者は三重県鈴鹿にある猿田彦大神の総本山の椿大神社によく参拝に行かれておられました。世界の平和、国家安泰、事業、従業員、顧客の事など感謝を込めて祈られたのではと私は思っています。
松下幸之助創業者は人間の弱さをよく認識されていました。そして「人間の偉大さを悟り、その天命を自覚し、衆知を高めつつ生々発展の大業を営まなければならない。人間の使命はこの天命を自覚実践することにある。」※と新しい人間観を提唱されています。
自然の摂理を認識し、その摂理に従って理想を現実化(平和と幸福と繁栄・PHP)させようと努力された経世済民の経営者です。私達は功利主義(算盤)と自然一体感の超越主義(宗教を含む)をよく理解し、人間社会の理想に向かって努力する事が尊い事であると私も思っています。THE21 7月増刊号(1993年)「いまだから松下幸之助」の173頁に京都駅前のPHP研究所本部の中に建てられた「根源社」の前で祈られている松下幸之助創業者の写真が掲載されています。
※出典:THE21 7月増刊号「いまだから松下幸之助」安藤宅編集 江口克彦 発行人 1993年 p.173引用要約
イメージ図(実物はもっと立派で大きいです)
エマソンのアメリカ精神と『易経』の風沢中孚
すべては自分の中にある「自己信頼」という生き方
エマソンは修養論の元祖として大きな影響力を持っています。
明治以後の日本で内村鑑三を主唱者として展開された無教会主義は、インテリ層を巻き込んだ強力な推進運動になりました。この源にあったのは、ラルフ・ワルド・エマソンの存在でした。エマソンは、アメリカ独立の中心地でありイギリスから宗教的な自由を求めてやってきた人たちが集まった土地で、宗教的には改革派教会のカルビン派が非常に強いところだったニューイングランドで、無教会主義を唱えました。
第二次世界大戦後のアメリカ合衆国にはポップ・フィロソフィー、すなわち大学で学ぶアカデミックな哲学とは異なる、民衆に訴えかけるような哲学が発生しますが、その元祖として挙げられるのがエマソンです。現代アメリカの精神がエマソンの思想です。内省に内省を重ねることにより、確信・信念となっていきます。信念を持つことにより人を動かすことができます。自分を信じれば必ずそれは叶うと言うことです。「至誠天に通ず」です。松下幸之助氏は水道哲学を唱え自分の経営理念を信じて推し進めて松下電器を発展させました。中国古典の中に『易経』がありますが、その中に「風沢中孚」と言う卦があります。意味は「誠」です。人も、天に応じて誠でなければなりません。誠であれば何事もできると書かれています。自分の心に誠であることが大事です。誠意は内にあります。信じることが道を開いていく事だと思っています。
エマソンは、自分の魂を探っているうちに1つの洞察を得ました。それは「あることをそうであるに違いないと心の底から信じられれば、それは必ず他の人にも通ずるはずである」という確信でした。考え抜いて、内省し、右顧左眄することなく自分の道を進めば良いと私は思っています。内省することが大事だと思います。因みに、エマソンの本は脈略がなく、思いつきで書いていますので若干読みにくいですが、エマソンの本をお薦めします。